こんにちは、がっちょです。
ソーチェーンの目立てをやってると、いつも横刃目立て角に悩まされます。
チゼルやマイクロチゼルなど、カッターの形状別に適切な横刃の目立て角度がありますが、よくない角度として「フック(鋭角すぎる)」が例に挙げられます。
このフック、絶対にダメな角度でもないんじゃない?という疑問がずっとありました。なぜなら新品のソーチェーンのカッターが強烈なフックだからです。
ひとこと「これだ!」みたいな結論は出ないので、調べたこと考えたことをまとめてみます。
横刃目立て角がフックでも、切れ味が悪くないのは何で?
新品のソーチェーンのカッターを見てみます(21BPXマイクロチゼル・21LGXチゼル)。
どう見てもフック。適正な横刃目立て角とされるのが、
- マイクロチゼル:85°
- チゼル:75°
どう見てもそれより鋭角(分度器の当て方によるけど55〜60°くらい?)です。
新品のソーチェーン(フック)の切れ味はどうなのか?
重要なのは切れ味です。
「フック(鋭角すぎ)」「バックスロープ(鈍角すぎ)」という悪い角度が示されるのは、横刃目立て角が切れ味に大きく影響するからで、自身の感覚としてもそのとおりだと思います。
フックの問題点としては下記が説明されます。
- 抵抗が大きく、体やチェーンソーへの負担が大きい
- キックバックしやすくコントロールが難しい
これを見るとなんだかフックは問題だらけだーみたいに思えますが、問題だらけのソーチェーンをメーカーが販売しないだろとも思います。
切れ味を確認するにあたって考慮すべき「木の固さ」「切る方向」の2点から、ソーチェーン21LGX(チゼル)の新品で切れ味を確認してみます。
木の固さによる切れ味の違い
木の固さによる切れ味です。
- スギ、ヒノキなど針葉樹(ソフトウッド):スムーズに切れる
- 桜、ケヤキなど広葉樹(ハードウッド):抵抗が大きいので当たり具合を注意しないと途中で回転が止まる、キックバックする
針葉樹を切る分には問題なさそうです。
逆に広葉樹をガンガン切っていくには、チェーンソーへのダメージがすごそう。
切る方向による切れ味の違い
スギ、ヒノキを切るとして、比較するのは下記の3種類の方向。
- 横引き(輪切り、玉切り、受け口水平切り、追い口)
- 縦引き(受け口斜め切り、根張り切り、オノ目入れ)
- 突っ込み切り(チェーンソーの先端を突っ込む切り方)
僕の感覚としては下記のとおり。
- 横引き:よく切れる
- 縦引き:なんかイマイチ
- 突っ込み切り:めちゃくちゃ切れる、けど少しキックバックしやすい
伐木するにあたっては、受け口斜め切りはもう少し切れてほしいなーという感じで、ほかはいい感じに切れてくれます。
突っ込み切りに関してはキックバックしやすいですけど、ガイドバーの当て方に注意すればコントロールはできます。
おが屑(切り屑)はどうなってる?
新品のソーチェーン(21LGX)で、ヒノキを切って出たおが屑を見てみます。
おが屑を見るのは、フックの問題点「上刃が先に切り進むので横刃の機能を失う」ということが起こっているかの確認です。
「永戸式目立て」による上刃と横刃の順番
「どういうこと?」という感じで、僕は最近まで考えたことないポイントでした。
秋田県がネットにアップしている資料「林業普及冊子No29よく切れるソーチェーンを目指して」を元に説明してみます。
日本には「永戸太郎」という目立て名人がいたそうで、現在のチェーンソーの目立て方法はこの方が考案した「永戸式目立て」が土台になってるみたいです。
永戸式目立てマニュアルで説明されているのが、ソーチェーンの上刃と横刃が木を切っていくときの順番と意味。
- 横刃が木の繊維を断ち切っていく(ノコギリの役割)
- 続いて上刃が削りとっていく(ノミの役割)
「ノコギリがノミよりも必ず先でなければならない」とのことで、ソーチェーンの横刃は上刃よりも先に木に当たることが絶対条件。
このことを踏まえると、ソーチェーンのフック状態(刃先が極端に尖っているもの)が良くないとされるのは「上刃が横刃よりも先に切り進めてしまうから」ということ。
そしてそれを確認できるのがおが屑。一辺がシャープに切れた長いおが屑が出ていれば、上刃と横刃が適切に機能していることになります。
おが屑の長さと長辺を見てみる
21LGX新品でヒノキを切ったときのおが屑。5cmくらいの長いものがちらほらあって、一辺もシャープに切れています。
おが屑の長さは、木の樹種や切る位置、樹齢で大きく変わってくるので目安ですが、良しとされるおが屑が出るのは事実だと思います。
なので、前述の「上刃と横刃の順番」と「フック」の関係性をどう考えるかですが、、、
- 新品のソーチェーンの横刃目立て角は誤差の範囲?
- もっと強烈なフックだとおが屑も短くなる?
とかごにょごにょ考えた結果、ようわからんです。
新品のソーチェーンで考慮すべきポイントは上刃切削角?
これまでをまとめると「スギ、ヒノキとか柔らかい木を切るならある程度フックでも大丈夫なんじゃね?」的な結論になっちゃいます。
が、新品のソーチェーンの場合、考えるポイントがもう1つあります。それは丸ヤスリで研いだ形とは違うこと。
新品の刃先を見ると、上刃の切削角が面としてはっきり出ていて、これは六角ヤスリで研いだ場合こんな形になります。
新品21LGX(チゼル)↓
新品21BPX(マイクロチゼル)↓
丸ヤスリで研ぐとこうはならず、円形なのでもっと角が曖昧な感じ。
丸ヤスリで研いだ21LPX(チゼル)↓
新品のソーチェーンがフックでも切れ味が悪くないのは、このへんの違いがあるからなのかなと思います。
実際、丸ヤスリより六角ヤスリで研ぐほうが(チゼル・マイクロチゼル問わず)切れ味が増す、という意見が散見されます。僕の感覚としてもそのとおりだと思います。
フックを直したほうが切れ味は良くなる
最後に、フックを修正した場合の切れ味を、21LGX(チゼル)で比べてみます。
↓修正前
↓修正後
使用するのは六角ヤスリ(ダブルベベル)。上刃と横刃の交点に合わせて、刃先から斜め下に研ぐやり方。
横刃目立て角75°は丸ヤスリでの場合(だと思う)。なので85〜90°くらいを目指して目立てしてみることに。
結果として、総合的な切れ味は良くなりました。
- 横引き:よく切れる
- 縦引き:よく切れる(改善)
- 突っ込み切り:切れ味は下がる、けどキックバックしにくくなった
突っ込み切りもキックバックポイント近くから切り込むことができるようになり、とくに縦引きの切れ味はなめらかに刃が入っていく感じでかなり改善。
ヒノキを切ったときのおが屑は、変わらず長いものが出ます。
六角ヤスリでの研ぎ方は正解がわからないので勉強中ですが、横刃目立て角はやはり落としたほうがよい結果です。
まとめ①:フックの新品のソーチェーンに言えること
何が言いたいのかわからなくなってきたので、フックの新品のソーチェーンについて、言えそうなことを簡単にまとめます。
1:総合的な切れ味は悪くない
- 針葉樹を切る場合はそんなに問題ない。総合的な切れ味は悪くない。
- とくに突っ込み切りの切削スピードはすさまじい。
- キックバックは注意すればそんなに起きない。
- 広葉樹を切る場合、横刃目立て角を直したほうがいい。
という具合。
2:「横刃目立て角がフックでも、切れ味が悪くないのは何で?」の回答
最初の問いである「横刃目立て角がフックでも、切れ味が悪くないのは何で?」については、
- 六角ヤスリで研いだ場合に近い上刃の形状をしているから
というのが1つの答えだと思います。
六角ヤスリでの目立て方法については、丸ヤスリと同じ水平に研ぐやり方があり、その場合は横刃目立て角が「くちばし型」と呼ばれる必ずフックな形になります。
21BPX(マイクロチゼル)を六角ヤスリで水平気味に研いだ場合の横刃目立て角↓
これが仮に切れない刃ならそもそも意味のない研ぎ方なので、それなりに切れるから方法として紹介されるわけです。
「六角ヤスリで研いだ場合に近い上刃の形状をしている」のはなんで切れるの?ということを考えると、上刃切削角、横刃切削角が面としてきっちり出ているから、ではないかと思います(憶測1)。
加えて、新品のソーチェーンは量産する過程で何かしらの機械(グラインダーとか?)で研がれているはず。その機械の形状や効率、そして切れ味の観点から、現状の形になっているんだと思います(憶測2)。
まとめ②:丸ヤスリで研ぐ場合は参考にならない
自分で目立てをしていく観点からいうと、「丸ヤスリで研ぐ場合は刃の形は参考にならない」ということ。
前述のとおり、丸ヤスリでは作れない上刃の形をしています。なので丸ヤスリで目立てする場合、横刃目立て角がフックの新品ソーチェーンは参考にすべきではないです。
切れ味は悪くないので、これは人に目立てを教える場合なんかは非常にややこしい話だと思います。
※フックになっていない新品ソーチェーン もあります。
・・・
以上、ごにょごにょと考えてみた経緯です。
丸ヤスリと六角ヤスリは、目立て角・切削角のお互いの関係性も異なってくるので、やってみると考えることがめちゃくちゃあって面白いです。
おしまい。