木の切り方

【伐倒】林業でいちばん基本的な木の倒し方「追い口切り」と、木が倒れるしくみ

大きな木を狙った方向に倒すのってどうやるんだろ?そもそもきこりってどんな木の切り方をしてるんだろ?

 

木を切り倒す方法として受け口・追い口という伝統的な技術があります。

林業では立っている木を切り倒すことを伐倒(ばっとう)と呼びます。

木を切る作業は危険がつきものなので、安全に正確に伐倒する技術は欠かせません。

ボクは2017年の春から山で木を切り始めました。

この記事ではボクがそこで習ったいちばん基本的な「追い口切り」という方法と、そのしくみについて解説します。

  • 細かい注意点をあげるとキリがないので、最低限の仕組みを書いています。
  • 伐倒技術に関しては『伐木造材のチェーンソーワーク』を参考にしています。木を切るための体系的な知識解説されている良書です。
  • チェーンソーで木を切り倒すのは危険な作業です。実際に行うのであれば「チェーンソーの特別教育」を必ず事前に受講し、初心者は指導者のもとで行ってください。

木の切り方は「受け口」と「追い口」をつくる

木を狙った方向に倒すには、木の根元に2つの切れ込みをつくります。

それは

  • 受け口(うけくち)
  • 追い口(おいくち)

というもの。

これらをつくることで、木を狙った方向に倒すことができます。

順に説明します。

 

①受け口をつくる

まず受け口というものをつくります。

↓こんなやつ

その名のとおり「くち」のような見た目。

チェーンソーで真横と斜め上の2方向から切り進んで、口元をぴったり合わせます。

この口が向いている方向で、木が倒れる方向の大半が決まります。

 

会合線で倒れる方向が決まる

口元の一直線に出会うラインを「会合線(かいごうせん)」と呼びます。

ここが木の倒れる支点の一部になります。

そして会合線と垂直に交わる方向が、木が倒れる方向

なのでこの会合線の向きはめちゃくちゃ重要。向いている方向がずれていれば、狙いに合うまで受け口を修正します。

なかなか一発で正確に決めるのはむずかしいです。

なので最初は小さめに受け口をつくって、方向を確認しつつ切り足しながら調整します。

※ただし「会合線と垂直に交わる方向=木が倒れる方向」とはならない場合もあります。

 

受け口のサイズ

では受け口をどのくらいの大きさでつくればいいのか?それにも目安があります。

基本的に、切り倒す位置の木の直径(伐根直径といいます)の1/4です。

木の直径が30cmであれば、受け口のサイズは7〜8cm、という具合。

実際に測ったりはあまりせず、目視でだいたい1/4かな?という感じでつくります。

ちなみに「受け口をどのくらいの高さの位置でつくるか」は慣れていないとけっこう迷います。僕は下記の方法で決めています。

 

②追い口をつくる

受け口ができたら、追い口をつくります。

簡単にいえば、受け口の反対側から水平に切り込みを入れます。

入れる高さは、受け口下切りを基準に、木の直径の15〜20%上の位置(直径30cmだと、4〜6cm)。

単純なようで、受け口をつくるよりむずかしいです。理由は下記の2つ。

途中で木が倒れ始めることがある

追い口を一定のところまで入れると、木の傾きによっては倒れ始めます。

傾いていく木の近くにいるのは非常に危険なので、その場合は退避しないといけません。

受け口をつくるときよりもかなり神経をつかいます。

受け口と追い口の間の「ツル」が支点になって木が倒れる

追い口は全部切りきるわけではありません。

受け口の会合線に平行になるように切り進んで、最後に一定の幅を残します。

これを「ツル」と呼びます(前述の会合線もツルの一部)。

ツルの幅の目安は、木の直径の1/10を目安にします。

このツルが支点となって木が倒れます。なのでツルがめちゃくちゃ重要

 

追い口の最終ラインは基本的に、会合線と平行になるよう正確につくる必要があります。

受け口と同じく正確さがもとめられます。

 

受け口と追い口はつまり扉の「蝶つがい」をつくっている

追い口切りで木が倒れるのは、扉が閉まるのと同じ理屈です。

受け口と追い口をつくってできるのは、扉の「蝶つがい」です。

そして切り残しのツルは蝶つがいの真ん中の軸になります。

なので軸がずれていると、閉じる方向もそれだけずれてしまいます。

↓倒れた根元。

↓ツルを正確につくれれば、狙った方向に倒せる。

ここでは省略しましたが、木を倒すには追い口を入れるだけでなく、基本的に「クサビ」という道具を使って木の重心を移動させて、徐々に傾けていきます。

 

ツルが正確につくれないと、倒す木を正確にコントロールできない

受け口と追い口をうまくつくれない、つまちツルが正確につくれないと、木は狙い通りに倒れてくれません。

たとえば、

  • ツルの向きがずれていると、倒す方向もずれる。
  • ツルの幅が厚いと、なかなか倒れない。
  • ツルの幅が不均一の場合、倒れていくとき、ツル幅の大きい方に引っ張られて方向が変わる。

(ツルの幅の大小については、ツル部分が裂けて倒れていくときの抵抗の大きさが変わります。)

逆にいえば、自分の思うように正確にツルがつくれないと倒す木を正確にコントロールできません

もしツルを切りすぎてしまうと強度が弱まり、ツルがちぎれて思わぬ方向に倒れることもあります。

↓ツルを切りすぎて途中でちぎれ、予定の90度左に倒れてしまったもの(伐倒を始めて間もない頃にやらかした失敗例・・・)。

逆に、正確にツルをつくれる技術があれば応用もできます。

例えばツルの幅・高さを状況に応じて調整して「倒れる方向」「倒れるスピード」をコントロールすることもできます。

ツルをより正確かつ安全につくるには「追いヅル切り」という切り方が有効です。

 

まとめ:受け口と追い口をつくるのは、木を確実にコントロールするため

細かいことをあげれば、切り倒すまでにもっとたくさんの注意点や段取りがあります。

が、基本的な倒し方は

受け口 ②追い口 です。

「そんなもの作らずまっすぐ切っちゃえば?」と思うかもしれません。

人力でコントロールできる細くて小さい木なら、それで問題ないこともあります。

ですが、人の力ではどうやっても動かせない木でそれをやってしまうと、

  • 途中でチェーンソーが木にはさまれる。
  • 途中で木がタテに大きく裂け上がる。
  • 確実に倒せる方向がほぼ1択(木がもともと傾いている方向)。

というような事態になる可能性大です。

最悪の場合、木がどちらに倒れてくるかわかりません。めちゃくちゃ危険。

なお、厚生労働省の定める「労働安全衛生規則」では、胸高直径20cm以上の木については必ず受け口、追い口、ツルをつくって切り倒すよう定められています(2019年8月より施行)。

木を正確に安全に切り倒すためにも、

  1. 受け口をつくる=木を倒れこませるスペースができ、会合線で倒れる方向が決まる。同時にツルの一部ができる。
  2. 追い口を入れる=適度に切り離すことで、木が裂けるのを防ぐ。同時にツルが完成する。
  3. ツルが支点となり、狙った方向へ倒せる。

という手順をふみます。(考えた人天才だと思う)

・・・

伐倒は危険な作業ですが、ポイントをしっかり把握して丁寧にやれば、そこまで危険は感じなくなりました。

また、伐倒の条件は木1本ごとにまったく違ってくるので、単純にマニュアル化できない部分もかなり多いです。

試行錯誤しながら経験値を得ていくことで、対応できる幅も広がる。そこも伐倒の面白さだと思います。

 

追記①:しくみを理解することが大事

伐倒を始めてからしばらく経って思うのは、やっぱりしくみを理解しているのが大事だということです。

受け口、追い口という基本的なことは変わりません。

が、前述の「ツルの幅は1/10」とか、「受け口は1/4」なんかは、あくまでも1つの目安でしかないと思います。

ツルの幅をもっと厚くしたり、追い口の高さを受け口下切りと揃えたり、条件によって切り方も無限にあります。

大事なのは、それをやることで何が起こるか、自分の中でしっかり説明できたときに初めて理解したことになります。

そこで初めて応用も効くようになります。仮説を立てて、検証していくの繰り返しなので、実践あるのみだと思います。

追記②:木を倒すにはテコをつかう

受け口や追い口をなぜつくるか?ひとことで言えばテコの原理をつかうためです。

小学生のときに習った「支点・力点・作用点」というあれです。

テコをつかえば小さな力で大きな力を得ることができます。

クサビで重心移動させて倒す場合だと、まず受け口の会合線が支点になります。

そして追い口にクサビを打ち込む(=力点)ことで上に持ち上がる力がツル(切り残しの部分)に働き(=作用点)、木の重心を徐々に受け口側に移動させていくことで倒します。

ロープで引いて倒す場合も考え方は同じです。支点は同じ(会合線)、力点と作用点の場所が変わってくるだけです。

林業の現場はいわば重量物の移動の繰り返しなので、テコはとても役立ちます。

テコをつかうために「支点をどこにとるか、どう力を加えるか、どこを動かしたいか」というようなものの見方はとっても重要です。

伐倒はもとよりチェーンソーワークやチェーンソーの仕組み、目立て方法なんかをイチから勉強したいなら『伐木造材のチェーンソーワーク』が超オススメ。

 

おしまい!

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