【伐倒】林業でいちばん基本的な木の倒し方「追い口切り」と、木が倒れるしくみ

木の切り方

林業といえばまず頭に浮かぶイメージが「山で木を切る」こと。

立っている木を切り倒すことを伐倒(ばっとう)と呼びます。

僕自身、まだまだ完璧とは言えませんが、いちばん基本的な「追い口切り」についての解説記事です。

  • ※ 細かい注意点をあげるとキリがないので、最低限の仕組みを書いています。
  • ※ 伐倒技術に関しては『伐木造材のチェーンソーワーク』を教本にしています。伐倒に関する知識・技術が体系立てて詳細に解説されているので、非常に勉強になります。

 

①受け口をつくる

まず受け口というものをつくります。

↓こんなやつ

その名のとおり「くち」のような見た目。チェーンソーで真横と斜め上の2方向から切り進んで、口元をぴったり合わせます。

なれないと結構むずかしい。

会合線で倒れる方向が決まる

口元の一直線に出会うラインを「会合線(かいごうせん)」と呼びます。

ここが木の倒れる支点になります。

そして会合線と垂直に交わる方向が、木が倒れる方向。なのでこのラインは重要です。

会合線の方向がずれていれば、狙いに合うまで受け口を修正をします。

なかなか一発で決まることはないので、最初は小さめに受け口をつくって、方向を確認しつつサイズ調整するのが無難です。

※ただし「会合線と垂直に交わる方向=木が倒れる方向」とはならない場合もあります。

参照:【伐倒】「受け口方向」=「伐倒方向」ではないこともある。

 

受け口のサイズ

では受け口をどのくらいの大きさでつくればいいのか?それにも目安があります。

基本的に、切り倒す位置の木の直径(伐根直径といいます)の1/4です。

木の直径が40cmであれば、受け口のサイズは10cm、という具合。

実際に測ったりはせず、目視でだいたい1/4かなーという感じでつくります。

※ちなみに「受け口をどのくらいの高さの位置でつくるか」は慣れていないとけっこう迷います。僕は下記の方法で決めています。

参照:【伐倒】受け口どのへんにつくろうかなーと迷わないために、最初に追い口の高さを決める方法と考え方。

 

②追い口をつくる

受け口ができたら、追い口をつくります。

簡単にいえば、受け口の反対側から水平に切り込みを入れます。

入れる高さは、受け口下切りを基準に、木の直径の15〜20%上の位置(直径40cmだと、6〜8cm)。

単純なようで、受け口をつくるよりはるかに難しいです。理由は下記の2つ。

途中で木が倒れ始めることがある

追い口を一定のところまで入れると、木の傾きによっては倒れ始めます。近くにいると危険なので、逃げなきゃいけない。受け口をつくるときよりも非常に神経をつかいます。

切り残す「ツル」がとても大事

追い口は全部切りきるわけではありません。

受け口の会合線に平行になるように切り進んで、最後に一定の幅を残します。

これを「ツル」と呼びます(前述の会合線もツルの一部)。

ツルの幅の目安は、木の直径の1/10を目安にします。

このツルが支点となって木が倒れます。なのでツルがめっちゃくちゃ重要!

↓倒れた根元はこんな感じ

↓狙い通り完璧に倒れてくれました。

※ここでは省略しましたが、木を倒すには追い口を入れるだけでなく、基本的に「クサビ」という道具を使って徐々に傾けていきます。

参照:【伐倒道具】木を起こす「クサビ」の大・中・小を比べた結果、サイズ大を切ってみました。

ツルがきちんとつくれないと・・・

もしツルを切りすぎてしまうと、ツルがちぎれて思わぬ方向に倒れることもあります。

また、

  • ツルの幅が厚いと、なかなか倒れない。
  • ツルの幅が不均一の場合、倒れていくとき、ツル幅の大きい方に引っ張られて方向が変わる。

つまり、ツル部分が裂けて倒れていくときの、抵抗の大きさが変わります。

これらの応用で、ツルの幅・高さを状況に応じて調整し「倒れる方向」「倒れるスピード」をコントロールすることも可能。

逆にいえば、自分の思うように正確にツルがつくれないと、倒す木をコントロールできません

 

↓ツルを切りすぎて途中でちぎれ、予定の90度左に倒れてしまったもの(伐倒を始めて間もない頃にやらかした失敗例・・・)。

※ツルをより正確かつ安全につくるには「追いヅル切り」という切り方が有効です。

参照:【伐倒】追い口切りより安全で確実な「追いヅル切り」

 

なんでそんな切り方するのか?

細かいことをあげれば、切り倒すまでにもっとたくさんの注意点や段取りがあります。

が、基本的な倒し方は

 

受け口 ②追い口 です。

 

「そんなもの作らずまっすぐ切っちゃえば?」と思うかもしれません。

人力でコントロールできる細くて小さい木なら、それもありです。

ですが、人の力ではどうやっても動かせない木(ほとんど)でそれをやってしまうと、

  • 途中でチェーンソーが木にはさまれる。
  • 途中で木がタテに大きく裂け上がる。
  • 確実に倒せる方向がほぼ1択(木がもともと傾いている方向)。

という事態になりやすい。

最悪の場合、木がどちらに傾くかわからないので、めちゃくちゃ危険。

  1. 受け口をつくる=木を倒れこませるスペースができ、会合線で倒れる方向が決まる。同時にツルの一部ができる。
  2. 追い口を入れる=適度に切り離すことで、木が裂けるのを防ぐ。同時にツルが完成する。
  3. ツルが支点となり、狙った方向へ倒せる。

という具合。考えた人天才だと思います!

伐倒は危険な作業ですが、ポイントをしっかり把握して丁寧にやれば、そこまで危険は感じなくなりました。

また、伐倒の条件は木1本ごとにまったく違ってくるので、単純にマニュアル化できない部分もかなり多いです。

試行錯誤しながら経験値を得ていくことで、対応できる幅も広がる。そこも伐倒の面白さだと感じます。

 

2018年3月追記:仕組みを理解することが大事

伐倒を始めてから約1年経過しました。そこで思うのは、やっぱり仕組みを理解しているのが大事だということです。

上記の「ツルの幅は1/10」とか、「受け口は1/4」なんかは、あくまでも1つの目安でしかないと思います。

ツルの幅をもっと厚くしたり、追い口の高さを受け口下切りと揃えたり、条件によって切り方も無限にあります。

参照:【伐倒】「追い口の高さを低くする」ことのメリットは、年輪の影響を受けにくいこと。

大事なのは、それをやることで何が起こるか、自分の中でしっかり説明できたときに初めて理解したことになります。

そこで初めて応用も効くようになります。仮説を立てて、検証していくの繰り返しなので、実践あるのみ!

 

さらに補足で追記:木を倒すにはテコをつかう

受け口や追い口をなぜつくるか?ひとことで言えばテコの原理をつかうためです。

小学生のときに習った「支点・力点・作用点」というあれです。

テコをつかえば小さな力で大きな力を得ることができます。

クサビで重心移動させて倒す場合だと、まず受け口の会合線が支点になります。

そして追い口にクサビを打ち込む(=力点)ことで上に持ち上がる力がツル(切り残しの部分)に働き(=作用点)、木の重心を徐々に受け口側に移動させていくことで倒します。

ロープで引いて倒す場合も考え方は同じです。支点は同じ(会合線)、力点と作用点の場所が変わってくるだけです。

林業の現場はいわば重量物の移動の繰り返しなので、テコはとても役立ちます。

テコをつかうために「支点をどこにとるか、どう力を加えるか、どこを動かしたいか」というようなものの見方はとっても重要です。

 

・・・

※伐倒はもとよりチェーンソーワークやチェーンソーの仕組み、目立て方法なんかをイチから勉強したいなら『伐木造材のチェーンソーワーク』が超オススメ。

テコについても簡単に解説されています。

参照:チェーンソーで木を切るためのバイブル『伐木造材のチェーンソーワーク』

 

おしまい!

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