最近こんなものをつくりました。
これはなにか?
簡単にいえば、卓上のネームプレートをつくっています(イベント用で頼まれたので)。
成形後に、年輪が見える断面部分にレーザーカッターで文字を刻印します。
なのでめっっっっちゃくちゃ磨きました…。
なんでこんな形にしたかの理由3つ
文字が入っていなければ、ぱっと見、
なんじゃこれ?
と思います。自分でつくっててもそう思いました。
こんな形にしたのにはもちろん理由があります(なかったらちょっとクレイジーすぎる)。
①「たんころ」を活用するため
人工林の針葉樹はまっすぐなほど、建築材料としての価値が高いです。
なので、曲がっている根本に近い部分は切り落とされることがよくあります。
これは通称「たんころ(端ころ)」と呼ばれます。
たんころも出荷すればバイオマス燃料となる木材(C〜D材)として買い取ってくれますが、重量換算なので価格としてはものすごく低い。
なので山から出す労力を考えると、基本的に林内に切り捨てられます(いわゆる「林地残材」のひとつ)。
ですが根本部分なので木としては太く、工夫すれば木材としての利用価値はあります。
(薪やスウェーデントーチなんかにも十分使えます)
今回つくったネームプレートは、この部分を利用してすべてつくりました。
②年輪の美しさを見せるため
形を半月状にした理由は2つあります。
まず1つ。木を切っていてよく思うのが、年輪の美しさ。
↓これはスギ。
「木」というのは、春〜夏にたくさん成長して、夏〜秋にゆっくり成長して、冬には成長がストップします。この1年の成長の証が年輪です。
なので年輪の
- 白っぽい輪っか:春〜夏に太った部分
- 黒っぽい輪っか:夏〜秋に太った部分
です。
なのでどちらかの輪っかを数えれば樹齢がわかります。
これらは単一的な輪っかの集まりでなく、自然のつくる複雑なゆらぎをもった造形をしています。
1本として同じ線形はなく、断面の色合いもきれいです(切りたても、乾燥して磨いたあとも)。
「木をつかうなら年輪を見せよう!」という単純な考えと、ネームプレートとして機能する形を考えた結果、こんな感じで切り出しました。
丸太を輪切りにした場合、ほぼ100%大きなクラックが入ってしまうので、この切り方なら大丈夫じゃなかという仮説もありました。
(結果、軽微なクラック程度で済んでいます。割れないでー)
③伐倒技術を連想させるため
形を半月状にした理由の2つめ。
林業では木を切り倒すことを「伐倒(ばっとう)」といいます。
伐倒には必ず「受け口」というものをつくります。
最初はこの受け口の木っ端からつくろうと思っていました。
なぜかというと、僕が林業の伐倒技術に触れて感動したからです。
仕組みとしては単純ですが、ものすごく深く考えられた方法だと思い、自分なりにブログ記事にまとめたりしました。
過去記事:【伐倒】林業でいちばん基本的な木の倒し方「追い口切り」と、木が倒れるしくみ
かっこよくいえば、
「木という重量物をコントロールするために考えられた技術の結晶」です。
どうせならいろんな人に知ってもらえればと思って、その橋渡しとして受け口の木っ端をつかうアイデアを思いつきました。
けれど結局はサイズがあまりにバラバラになってしまうので、たんころから切り出す結果となりました。
(ネームプレートとしての機能を優先させ、形は完全な二等辺三角形にしました)
わかる人にはわかるのではないか!と勝手な妄想をしています。
話の種になればいいなーと。
まとめ:木のいちばん近くにいるから、こそ
前述の3つの理由は、山で実際に木を切っている立場でしか思いつかない発想じゃないかと思います。
僕は木工作家じゃないので、きれいな木のお皿なんかはつくれません。
製材技術もないので、柱やフローリング材なんかもつくれません。
ただそれでも、木を切る立場で、ありあわせのチェーンソーと伐木技術でも形にできるものはたくさんあると思います。
それに市場価値があるかとか、クオリティはどうかとかはいったん置いといて、思いつくだけやってみればいいし、形にするのはすげー面白いです。
林業はそんな余白がめちゃくちゃあります。
おしまい!
はじめまして!
福井に住んでいて先月から林業従事者になりました‼︎
色々と勉強させて頂きます!
コメントありがとうございます。
僕も初心者なので、このブログに書いてあることは林業のほんの一部の知識です。参考程度に捉えてください。
林業はいろんな意味でむずかしく面白い仕事だと思います。
お互いがんばりましょう!
端コロでネームプレートとは意外な発想で面白いですね。素敵です。作り手の温かみが伝わってきそうです。