チェーンソーで丸太を切るとき、得意な方向と苦手な方向があります。
「縦引き」と「横引き」というやつです。チェーンソーは縦引きが苦手で時間がかかります。
チェーンソーはなぜ縦引きが苦手なのか、いくつか例をあげて考えてみます。
素人が断片的な知識をもとに考えているので、いろいろ間違ってるかもしれません。ご参考までに読んでいただければと思います。
チェーンソーが縦引きが苦手な理由
チェーンソーは木に対していろんな角度から切り込んでいける機械です。
なぜ縦引きが苦手なんでしょうか?
単純に結論をいえば、チェーンソーの刃が横引き用につくられているからです。
そもそも横引きと縦引きって何?
木は繊維の方向があります。木目に見えている線です↓
切り株を見ると繊維がちぎれた様子が一目瞭然↓
横引きとは、この木の繊維方向に対して直角に切ることです。
反対に縦引きとは、木の繊維方向に対して平行に切ることです。
縦引きの方向は2種類あって、
- 木の側面から平行に切る
- 木の木口(断面)から平行に切る
例えばチェーンソー製材やスウェーデントーチ作りは、木口から縦引きしていきます。
チェーンソーの刃は横引き用にできているため、縦引きをするとかなり抵抗が大きく時間がかかります。
横引きと縦引き、具体的に何がちがう?
横引きと縦引きでは木の繊維方向がちがってきます。
そうすると具体的になにがちがってくるのか、2つの例をもとに説明します。
刃の形を変える必要がある
ノコギリを例に出します。ノコギリの刃には「横引き用」「縦引き用」の2種類があります。
なので効率的に切るには、木の繊維方向に対して刃の形を変える必要がある、ということです。
横引き用は、小さな三角形の刃1本1本について、両側面先端とも鋭く角度がついた小刀のような形をしています。
↓横引き用ノコギリの刃
横引きは木の繊維を断ち切っていく方向なので、切る仕事をさせるためにこんな形になっています。
対して縦引き用は、1本1本が大きめの三角形で、側面や先端に横引き用のような鋭い角度はついていません。
これは木の繊維に沿って切るので、繊維を上から削り取るようなノミの役割をしています。
こちらの動画がめちゃくちゃわかりやすいです↓
ちなみにチェーンソーとノコギリでは、刃の形がぜんぜん違います。
チェーンソーは鉋(かんな)、ノコギリは小刀(または彫刻刀)みたいな感じ。
けれどチェーンソーと横引き用ノコギリは「木の繊維を断ち切る」という役割や考え方は同じです。
なのでチェーンソーの刃は「縦引きが苦手」なのだと思います。
「切り屑の形」がちがう理由
横引きと縦引きでは、チェーンソーで切ったときに出る切り屑の形がちがいます。
「なんでそんな切り屑が出るか」のイメージ像として、丸めたコピー用紙の束(=丸太)を例にしてみます。
黒線が繊維方向、用紙1枚1枚は年輪って考えてください…。
横引きの切り屑
5mm〜1cm以上の切り屑になってます。(例えるならよくある鰹の削り節?)
↓切るイメージとしてはこんな感じ。
縦引き(側面から)の切り屑
切り屑1本1本がめちゃくちゃ長いです。シュレッダーにかけた紙みたい。
↓切るイメージ。
チェーンソーの刃はノコギリのような小刀ではなく、鉋(かんな)のような作りになっています。なので繊維方向に平行に切った場合、とっても長い切り屑が出ます。
スイスイ切れそうな感じがしますが抵抗はかなり大きいです。おそらく切り屑が大きすぎて、それが抵抗になってるんじゃないでしょうか。
縦引き(木口から)の切り屑
屑というより粉に近いです。
↓切るイメージ。ぜんぶの用紙に刃をあてて、上からぶった切る感じ。
なんとなく粉になりそうなイメージが湧きます。
そもそもこの切り方は、
- 切り進む方向:繊維方向と平行
- 繊維と刃の交差する角度:直角
になっています。これは前述の条件に当てはめると、縦引きとも横引きとも言えると思います。今までずっと縦引きだと思ってましたが、実際どっちなんでしょうか?
いずれにせよチェーンソーで切るにはかなり抵抗の大きな切り方です。
追記:縦引きの動画を撮ってみました
縦引きの切り屑の様子がよくわかります。
「縦引き用のソーチェーン」は何がちがう?
基本的にチェーンソーの刃(ソーチェーン)は横引き用ですが、縦引き用の刃もあります。
リッピングチェーンというやつで、メーカーから販売されています。
横引き用と違うのは、上刃目立て角度を5〜10°くらいにしているとのこと。ちがいはそこだけなので、横引き用ソーチェーンを縦引き用の角度にすれば買わなくていいみたいです。
上刃目立て角度を5〜10°にすることで、下記のようになるんじゃないかと思います。
- 上刃の切断面積を少なくして、抵抗を弱める
- 横刃切削角度を鈍角にして、横刃の切削能力を弱める
- 側面からの縦引きの場合、切り屑も短くなる?
おそらく切削能力をあえて弱めることで、縦引き用ノコギリと同じような機能(繊維を上から削り取るようなノミの役割)に近づけているんじゃないかなと。
木口からの縦引きにリッピングチェーンは効果がある?
前述のとおり、木口からの縦引きは
- 切り進む方向:繊維方向と平行
- 繊維と刃の交差する角度:直角
なので、縦引きと横引きの合いの子みたいなイメージだと思います。繊維を断ち切れたほうがいいし、削り取れたほうがいい気もします。
そこから思うに、リッピングチェーンの効果ってどれくらい?という疑問があります。
Yahoo!知恵袋に同じような質問がありました。引用すると
一般的にチェンソーで縦挽きする場合は、刃の目立て角をバーに対して直角に近くなるようにするみたいですが、それは縦挽きでも、細長い切りくずが出るような、バーを材に対して斜めに切って行く場合かと推察しています。
一方、アラスカンミルなどを用いたチェーンソー製材では、木口から材に対して直角に切り進んで行きますが、その場合は木材の繊維に対しても直角に端から削って行くような切り方になるので、切りくずは粉の様になります。というわけで、私は製材の場合も一般的に玉切り、伐倒をするのと全く同じ目立て角のソーチェンを使っています。
側面から縦引きするならリッピングチェーンは効果的だけど、木口から縦引きするなら普通の横引き用ソーチェーンでいいんじゃない?みたいな質問です。
ノコギリの縦引きでも、完璧に木口と平行(=繊維と直角)には切らず、斜めから切り込んでいくのがほとんどな気がします。その場合、繊維と刃の角度はある程度平行になりそうです。
ただ、製材機でつかう帯鋸(バンドソー)は縦引き仕様で、木口から縦引きしていきます。なのでリッピングチェーンは効果的なのかもしれません。
…リッピングチェーンでスウェーデントーチやチェーンソー製材はどれくらい効率的に切れるのか。
やらないと分からないので、そのうち実際にやってみて追記します。
まとめ:とにかく縦引きはしんどい
チェーンソーで縦引きするのは、とにかくしんどいです。
無理するとチェーンソーが壊れかねない切り方なので、できるだけ大排気量のチェーンソーでやりましょう。
おしまい!
大変ためになる記事でした。
切り方の違いと実際の切りくずが画像付きで説明されており、切り方によってこんなにも違いがあるのかと理解が進みました。
そこで1つ疑問に思ったのですが、ソーチェンは3つのケース同じものを使うとした場合、チェンオイルの吐出量はケースに合わせて調整をするのでしょうか?
特に木口からの縦引きですと切りくずが非常に細かく詰まりやすいかと思いますが、吐出量である程度予防できたりするのでしょうか?
コメントありがとうございます!
チェーンオイルの吐出量はとくに調整してませんでしたが、たしかに言われてみれば…。
以前、チェーンオイルが出なくなってオイルポンプを交換したんですが、そのときスウェーデントーチ作りで縦引きしてました。
おっしゃる通り、木口の縦引きは吐出量多めにしたほうが詰まりや焼き付きの保護になると思います。
以前にチェーンソー製材を見学したときも、たまにソーチェーンに直接オイルを滴らしながら切るくらい、注意されていました。
重要なご指摘ありがとうございます!