最新作『騎士団長殺し』が2017年2月24日に発売になります。ファンには素晴らしいニュース。
下記の方のツイートに、中・長編小説のまとまった作品年表があったので引用。ジャンル別に【ファンタジー】か、【リアリズム】かで分けられていて見やすく、とても面白くまとまってる。
村上春樹さんの新作についていろいろ聞かれるので、いちお書いときます。①長編作品はファンタジーとリアリズムが交互にくるので、次はファンタジー要素が強い ②必ず過去の短編にヒントがある③上下2冊はノルウェイ→ダンス→カフカと名作揃い。次も名作誕生の予感がする。こんなところです。 pic.twitter.com/dGNFTdYZN2
— ナカムラクニオ(6次元) (@6jigen) 2016年11月30日
ツイートで述べられているとおり、重厚長大な長編小説はいずれもファンタジー色が強く、中編小説はリアリズム寄りに位置している。そしてそれらが交互に発表されている。
前回の中編は『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』 。それ以降に短編集『女のいない男たち』、エッセイ集『職業としての小説家』『ラオスにいったい何があるというんですか?』を発表している。
今回は満を辞しての長編小説、という形にみえる。
いつものとおり内容がわからない
『1Q84』のときもそうだったけれど、小説のあらすじは一切公開されていない。『騎士団長殺し』というメインタイトルと、付随するサブタイトルのみ。
「第1部 顕れるイデア編」
「第2部 遷(うつ)ろうメタファー編」
たとえば映画が公開されるとして、その予告編が無いなんて考えられない。ハードカバーなので1冊税込1,944円だから合計約4,000円。けっして安い買い物じゃないのに、初版が50万部。
長編小説は読み終えるのにとても時間がかかるし、可処分時間(個人が自由に過ごせる時間)を奪い合うコンテンツは世の中にあふれている。それでも売れる見込みがあるんだろう(話題で買う人もたくさんいるだろうし)。
参照:
村上春樹さんの「騎士団長殺し」 初版は各巻50万部:朝日新聞デジタル
タイトルから想像するもの
「殺し」というからには強烈な悪役を想像してしまう。『海辺のカフカ』で登場する、猫を切り刻んでその心臓を食らう「ジョニーウォーカー」のイメージ。
また第1部○○編、第2部○○編というタイトル付けは『ねじまき鳥クロニクル』と同じ。
「第1部 泥棒かささぎ編」
「第2部 予言する鳥編」
「第3部 鳥刺し男編」
『ねじまき鳥クロニクル』も『1Q84』も、しばらくたってから第3部が発表されているので、今回もあることを期待。
リアルタイムで読める喜び
僕が初めてリアルタイムで読んだのは2004年出版の『アフターダーク』。なので前述の年表を見ると、ごくごく最近のことになる。ファンの作者の作品を待ち望むのは、それ自体とても幸せなことだ。
また、時代の空気に対して彼の小説がどう受け止められたか、というのは個人的にとても興味がある。『1Q84』というあんなに長くて奇妙な小説が3巻すべてミリオンセラーになったのも、当時の空気やそこに生きる人たち(僕もそうだ)の中に、深く通底するものがあったからなんじゃないかと思う。
『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』以降、長編小説はどんどん複雑に、そして奇妙な物語になっている。あいかわらず文章はとても読みやすいしわかりやすい。「じゃあ感想は?」と聞かれると簡単には答えられない。いろんな語り口があって、とても一言ではいえない。
村上春樹は2017年2月現在68歳。ドストエフスキーが『カラマーゾフの兄弟』を発表したのは58歳のときなので、それはとっくに超えている。
最新作をそのときに読める喜びを、しっかり噛みしめたい。