チェーンソーで木を切り倒す作業「伐倒」。
以前、その方法としくみについて簡単に記事を書きました。
・【伐倒】林業でいちばん基本的な木の倒し方「追い口切り」と、木が倒れるしくみ
そこでは触れなかった、伐倒する前に決める「方向」について書いてみます。
伐倒の方向には2つある
木を切り倒すとき、はじめに方向を2つ決めます。
①木が倒れる方向「伐倒方向」
②受け口会合線の向き「受け口方向」
伐倒方向というのは、木の先端が最終的に倒れる方向です。
方向ではなくもっと厳密に「伐倒点」と呼ぶ人もいます。
木が途中で倒れなくなる場合(=かかり木)は、先端が他の木に引っかかるためです。
↓ヒノキのかかり木
なのでこの先端がすんなり倒れていく方向をイメージして、伐倒方向を決めます。
対して受け口方向。
木は受け口につくった「会合線」に対して直角に倒れます。
なので「受け口方向」=「伐倒方向」な気もしますが、これは木がまっすぐ伸びている場合の話。
受け口は木の根本につくります。
固い地盤や斜面に生えている木は、根本が曲がっている場合が多いです。
途中から幹が曲がっていたり、そもそも斜めに傾いて生えていたりもします。
その場合、「木の先端」と「受け口」の位置は同じ点にあるわけではありません。
そのズレを計算して受け口方向を決めます。イメージとしては下記の感じ(なはず!)。
ズレを計算するのはけっこう難しいです。
受け口方向をどう決めるか?
僕もまだ試行錯誤の状況ですが、下記の手順でざっくり決めています。
①周囲の状況からだいたいの伐倒方向を決める。
②対象木の根元に立ち、伐倒方向を向いた状態で木の先端を見上げ、根本と先端がどれくらいズレているか判断する。
③先端から地面までのラインを目で追って、正確な伐倒方向(伐倒点)を決める。
④先程のズレを踏まえて、伐倒点から左右にズラしたポイントが受け口方向となる。
ほとんど感覚頼りなので、正確に倒すには経験がものをいいます。
計算してバッチリ倒せたときはかなり嬉しいです。
あまりに根本が曲がりまくっている場合、曲がりのない高い位置で受け口をつくるのも1つの方法だと思います。
追記:本では解説されていない?
ここで書いた内容と同じことが、林業雑誌『林業現場人 道具と技Vol.4』にも紹介されています。
長野県の森林組合班長の方が解説されていて、そこでは冒頭にこう語られています。
「不思議なことがあるんです…。
〜中略〜
どんな日本の本を見ても、受け口を伐倒方向へ向けるとしか書いてないですよね。
確かに伐倒方向は受け口によって決まるんですけど、伐倒目標と伐倒方向は必ずしも同じではない。
つまり、倒したいというところへ向けて受け口を切っても、そこへ木が倒れない場合がありますよね。
だから、多くの人が狙えているのかなあって。」
(P31:偏心木の伐倒)
ここでいう「伐倒方向」とは、僕が書いた中での「受け口方向」。「伐倒目標」は「伐倒点」のこと。
つまり「受け口の方向に木が倒れていくとは限らないよ」ということ。
少し考えれば分かることです。でも確かに、何かの本で読んだのはこの記事が初めてでした。
丁寧に解説されているのに加えて、特集「正確な伐倒を極める」がかなり面白いので、興味があればぜひ読んでみてください!
・・・
伐倒はほんと奥が深いなーと思います。
おしまい!