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『伐木のメカニズム』を読むと「受け口/追い口」の考え方が深まります。

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こんにちは、がっちょです。

『伐木のメカニズム』という、伐木に関する本を読みました。

内容としては伐木の経験者向けの本ですが、「伐木やる人必読!」みたいな本にしたほうがいいんじゃないかと思えるくらい、伐倒の仕組みの復習や新しい視点をもらえる本でした。

この記事では本の内容に簡単に触れ、その中でも僕が特に「そういう考え方あるんかー」と思った部分について紹介します。

『伐木のメカニズム』を読むと「受け口/追い口」の考え方が深まる

この本はシンプルに、伐木のメカニズムについて書かれています(かかり木処理など細かい話はありません)。

「伐木のメカニズム」とはつまり

  • 受け口
  • 追い口
  • その間にできる「ツル」

の3者の関係性です。

木が倒れるまでに、それらがどういう役割を果たしているか、お互いがどう作用しているか、どんな結果が想定されるか、などがとても丁寧に説明されています。

受け口ひとつとっても、

  • 受け口の角度:ツルが破断するタイミング
  • 受け口の深さ:ツルの強度の関係
  • 受け口の会合線:一直線に正確につくることの意味

など、考えるべきポイントは複数あります。

そして次につくる追い口は、受け口に対してどうつくるか。たとえば受け口の会合線に対して、追い口の高さを

  • 高くした場合
  • そろえた場合
  • 低くした場合

など。想定される1つ1つのケースについて紐解くように解説されています。

  • なんとなくイメージしてたけどそこまで深く考えてなかった…
  • 考えもしなかったけど言われてみれば確かに…

みたいな伐木作業における「考えもれ」的なものが、読むことでけっこうクリアになるんじゃないかなと思いました。

「中立軸」と「ツル幅の不均一」の関係

この本の中で、僕が「そういう考え方あるんかー」と面白く感じた部分について、2つ挙げます。

「中立軸」というものと、「ツル幅の不均一」の関係についてです。

ツルは中立軸で折れ曲がる

本書第2章の「ツルに加わる力と役割(P98)」の中で、中立軸というものが説明されています。

たとえば棒を曲げると、一方の面には引き延ばす力(引張力)が、もう一方には押しつぶす力(圧縮力)が加わります。

そして両者の真ん中には「押しつぶされも引き延ばされもしない部分」があり、これを中立軸(あるいは中立面)と呼ぶそうです。

これをツルに置き換えると下記になります。

  • 受け口側のツル部分(会合線):圧縮力
  • 追い口側のツル部分(追い口の切り終わり):引張力
  • ツルの真ん中:中立軸

僕のイメージでは会合線を支点にして折れ曲がり、伐倒方向も決まると思っていました(会合線の垂線=伐倒方向)。

引張と圧縮、2つの力により中立軸が発生するのなら、たしかに中立軸で折れ曲がりそうなイメージが描けます。

伐倒方向については、ツル幅が均一(会合線と追い口の切り終わりが平行)なら、中立軸で折れ曲がるにしても伐倒方向に変わりはありません(会合線と平行なので)。

ツル幅を不均一にした場合の中立軸

伐倒方向が変わる可能性があるのは、ツル幅を不均一にした場合です。

一方を厚く、一方を薄くするといったツルの形です。

この場合の中立軸を考えると、会合線に平行とはなりません。なので中立軸の垂線を伐倒方向と考えるなら、会合線の伐倒方向とは変わってきます。実際どうなんでしょうか?

意図的な「ツル幅の不均一」で伐倒方向はコントロールできる?

ツル幅は均一にするのが伐木の基本となりますが、意図的に不均一にする場合があります。

左右のどちから一方を厚くすることで「ツルを厚くしたほうに木が引っ張られて、伐倒方向を変化させられる」というのが一般的な認識だと僕は思っています(そう習った覚えもあります)。

この方法による木のコントロールは完璧な「個人の感覚」の話になるので、正確な再現性が無いに等しいです。ツル幅の不均一での調整よりは会合線の方向で決めるのが再現性があるので、個人的にはあまり使わない方法です。

そもそもツル幅を不均一にした場合。伐倒方向はどれくらい変化させられるんでしょうか?

これについては本書第3章の「ツル幅が均一にならない(P147)」で説明されていますが、なかなか単純な話ではないようです。

簡単に本書の結論を抜き出すと、

1)ツルの弱い樹種では、ツルの後方末端の厚い部分からツルの破壊が進み、結局はツル幅が均一になって倒れる可能性がある(会合線の方向)。

2)ツルの強い樹種では不均一のまま倒れていき、ツルの厚い方向へ振られる可能性がある(中立軸の方向)。

3)ツルが強いか弱いかは樹種による。そもそも左右の厚みが違うと制御がむずかしく不安定になりやすいので、ツル幅の不均一によるコントロールはおすすめできない。

という感じ(断定しているのではなく、いずれも可能性の話です)。たとえばスギは繊維が弱いので、ツル幅不均一でのコントロールはあまり意味がないのかもしれません。

偏心木の伐倒には、中立軸の方向が目安にできる?

偏心木を重心じゃない方向に倒す場合、ツルの強度がかなり重要になります。

普段通りのツル幅だと、ツルが維持できなくてすぐに破断する(伐倒方向も変わる)可能性が高いです。

ツルの強い樹種の偏心木については、「ツルを保全する」意味で一方のツル幅を厚くしたい場合、中立軸の指す伐倒方向を読みながらツル幅の不均一を狙うのはありかも、と思いました。今度の伐木で試してみます。

追記:中立軸を確認してみた

伐倒した切り株を見ると、中立軸のようなものが確認できました。

ツルは会合線でなく中立軸で折れ曲がる、というのは本当みたいです。

ただ、中立軸は切り倒すまで目視できないので、ツルは会合線に対して平行に残す(=会合線が伐倒方向を示す)のが、やっぱり伐倒方向の決定にとってはいちばんわかりやすいと思います。

まとめ:自分で判断するための材料を得る本

どの伐木の本にも書かれていることですが、伐木の方法は対象の木の条件によって変わってきます。

本書のまとめに書かれていることも同じです。

伐倒に関する角度や数値を画一的に決めることは本来難しいことなのです。経験則としてさまざまな試行錯誤の上、現在のような技術が目安として決められていると理解してください。「木の切り方はいつも同じではない」のです。(P166)

読んでいると目にとまりますが、分からないことは「分からない」と書かれています。伐木に対して客観的・中立的に説明されています。

伐木作業の都度の判断は、結局自分でするしかありません。その判断材料を得られる本でした。

個人的にはもっと突っ込んで検証してほしい部分(ツル強度と年輪の接線方向の関係とか)があったので、いずれ増補版とか出て欲しいです。

おしまい。


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