チェーンソーを初めて扱う場合、そもそもエンジンのかけ方がむずかしかったります。
けど手順を覚えて繰り返せば、そんなにむずかしくありません。慣れてしまえばかんたんです。
この記事では基本的なチェーンソーのエンジンのかけ方の手順をかんたんに解説します。
チェーンソーのエンジンのかけ方
チェーンソーのエンジンのかけ方は、下記の2つで少し違ってきます。
- 「その日初めて動かす」ような、エンジンが冷えている場合(ちょっとコツがいる)
- 「エンジンを止めてから間もない」ような、エンジンが温まっている場合(かんたん)
エンジンが冷えている場合で説明していきます。
①まずチェーンオイルと混合ガソリンの補給
エンジン始動前に、チェーンオイルと混合ガソリンを満タンにします。
給油口は別々なので、入れ間違えないよう片方ずつ開けて補給しましょう。
↓チェーンオイル(ソーチェーンを保護するために必要なオイル)
↓混合ガソリン(エンジンで使われる燃料)
めちゃくちゃ基本的なことですが、チェーンオイルと混合ガソリンはまったく別の用途です。
- チェーンオイル:ソーチェーンを保護するために必要なオイル。高速で回転するソーチェーンの摩耗や焼き付きを防ぎます。
- 混合ガソリン:ガソリンと「2サイクルエンジンオイル」を混ぜたもの。チェーンソーに搭載されているのは「2サイクルエンジン」というエンジンで、混合ガソリンが必要です。
チェーンソーを使っていれば両方なくなっていくので、補給は必ず両方やりましょう。
②チェーンブレーキをかける
チェーンブレーキはソーチェーンが回らないようにするための安全装置です。
フロントハンドルの前側にハンドガードがあり、それをソーチェーン側に押すとチェーンブレーキがかかります。
慣れてくるとチェーンブレーキを省略することも多いですが、慣れないうちは必ずチェーンブレーキをかけたほうがいいです。エンジン始動の手順を間違えたり、ソーチェーンの張り具合が緩いと、かかった後にソーチェーンが勝手に回ることがあるからです。
③スイッチを始動位置にする(ある場合だけ)
電気系統のスイッチが「始動」と「停止」で切り替えるタイプのチェーンソーは、スイッチを上にあげるなどして始動位置にします。
始動スイッチがないチェーンソーもあります。たとえば海外メーカーの「ハスクバーナ」のチェーンソーだとスイッチは始動のときは使わず、停止させるときに使います。
④プライマリーポンプを押して燃料を送る
プライマリーポンプはタンク内の燃料(混合ガソリン)をエンジンのほうに手動で送ってやるポンプです(バージポンプとも呼ばれます)。
このポンプで燃料を補助的に送っておくことで、エンジンがかかりやすくなります。
10回くらい押せば十分だと思います。
(プライマリーポンプがないチェーンソーの場合、スターターグリップを何回も引くことで燃料をタンクから送ることができます)
⑤デコンプを押して圧抜きする(ある場合だけ)
「デコンプ」があるチェーンソーの場合は、デコンプを押しておきます。
これでエンジン内部の圧抜きができて、スターターグリップを引くのが軽くなります。
⑥チョークレバーを引く
チョークレバー(チョークノブともいいます)を引きます。
詳しい説明は後述しますが、これで「初爆」というエンジンがかかりやすい状態を起こすことができます。
⑦スターターグリップを引く
ここまで準備ができたら、スターターグリップを引いてエンジン内部の爆発を起こしていきます。
スターターグリップをしっかりと引くには、チェーンソーをしっかり固定させます。
やり方は下記の2つ。
- 地面に置いて足で踏む
- 立った姿勢で股にはさむ
慣れていないうちは、地面に置いてやるほうが安定しやすいです。
手順としては
- チェーンソーを平らな地面に置く
- リアハンドルを右足で踏む
- 左手でフロントハンドルを持って押さえつける
- 右手でスターターグリップを引く
スターターグリップを引くときは、ロープが軽い力で引けるところまで引いておいてから、そこから一気に引き上げます。
⑧初爆の音を確認したら、スロットルトリガーを引く
スターターグリップを数回引くと、そのうち「ドゥルンッ!」という大きめの音がします。
これが「初爆(最初の爆発)」が起きた合図で、エンジン内部が温まってかかりやすい状態になっています。初爆してもエンジンはまだかかりません(エンストします)。
初爆の音が確認できたら、リアハンドルにあるスロットルトリガーを引きます(ここ大事!)。
引くとカチッと音がして、下記の2つが起こります。
- チョークレバーが元に戻る
- ハーフスロットルが解除される
という状態になります(詳しくは後述します)。
⑨再度スターターグリップを引いてエンジンをかける
あとはスターターグリップを何回か引けばエンジンがかかり、アイドリング状態になります。
これでエンジン始動の完了です!
ハンドガードを後ろに戻してチェーンブレーキを解除して、スロットルトリガーを引けばソーチェーンが回転します。
初めの数分間はフルスロットルで使わず、低速で回転させましょう。
・・・という流れです。
慣れたらかんたんですが、慣れるまでは1つ1つ確実にやっていきましょう。
温まった状態だとすぐにエンジンがかかる
エンジンを止めてから間もないような温まった状態だと、スターターグリップを引けばすぐにエンジンがかかります。
季節にもよりますが、例えばお昼休憩で30分〜1時間くらい休ませたような場合は、またチョークを引いて初爆させないとかかりにくいです。
何回かスターターグリップを引いてかからなければ、またチョークを引いて初爆させましょう。
立った姿勢でのエンジンのかけ方
エンジン始動に慣れてくれば、立った姿勢でエンジンをかけたほうが早いです。
- 股の間にリアハンドルをしっかり挟んで固定する
- 左手を伸ばしてフロントハンドルをしっかり握り、上下にブレないよう押さえる
- チェーンソー本体はスターターグリップを引きやすい角度に斜めにして、右手でスターターグリップを引く
という感じ。
エンジンをかけるときに注意すること
エンジンをかけるときに注意するポイントは、初爆後にスロットルトリガーを引いて確実に「チョークレバーを戻す」「ハーフスロットルを解除する」ことです。
これを忘れると2つトラブルにつながります。
チョークレバーを引いたままだとエンジンがかからなくなる
初爆させたあと、チョークレバーを戻し忘れたままスターターグリップを引き続けると、エンジンがかからなくなります。
なので必ずスロットルトリガーを引いて戻してください。
エンジンがかからなくなる理由はチョークレバーを引く仕組みにあります。
チョークレバーを引くと内部の「チョーク弁」が閉じます(チェーンソーによってはエアフィルターを外すとチョーク弁が見えます)。
チョーク弁が閉じるとキャブレター(燃料の気化装置)に送られる空気の量が絞られて、燃料が濃い目の混合気(霧状の燃料がまざった空気)がエンジンに送られます。
そうすることでエンジンが冷えた状態でも爆発が起こりやすくなり、そのうち初爆が起きます。
初爆が起きたあとはチェーンソーはエンストするので、チョーク弁を元にもどしてやることで、正常な混合気に戻してやります。
なので!チョークレバーを戻し忘れると、燃料が多すぎる混合気のせいで点火プラグが濡れて、正常に点火しなくなります(「燃料かぶり」といったりします)。
こうなるとエンジンがかからないので、
- 点火プラグを外して乾かす
- 点火プラグを外した状態でスターターグリップを何度か引いて、シリンダー内の混合気を排出させる
僕の経験ではこれで解決できます。
↓点火プラグ
ハーフスロットルは始動前に解除しましょう
これもチョークレバーの仕組みですが、チョークレバーを引くと同時に「ハーフスロットル」の状態になります。
ハーフスロットルはかんたんに説明すると「スロットルトリガーが少し引かれた状態」のことです。
なのでハーフスロットル状態でエンジンがかかると、ソーチェーンが高速で回ろうとします。
ただし事前にチェーンブレーキをかけていれば「ブーーンッ!!」とブレーキ音がして回転は防げます。これはすぐに解除してアイドリング状態にしないとチェーンソーが傷みます。
チェーンソーの取扱説明書には「エンジン始動後はすぐにスロットルトリガーを引いてラッチ状態(ハーフスロットルのこと)を解除してください」と書かれています。
この仕組みになっているのは、即座に回転をあげてエンジンをより始動しやすくするためのものだと思います。
けれど、もしチェーンブレーキをかけ忘れて予期せず回ってしまうとめちゃくちゃ危ないです。そもそもブレーキ状態で回そうとするのもあまり良くない気がします。
なので初爆してエンストしたあとは、まずスロットルトリガーを引いてハーフスロットルを解除したほうがいいです。トリガーを引けば同時にチョークレバーも元に戻るので手間は増えません。
めちゃくちゃ気温が低いとか、よほどエンジンがかかりにくい環境じゃないかぎり、ハーフスロットルは解除してまったく問題ないと僕は思います。
まとめ
簡単にまとめるとこんな手順です。
チェーンソーによっては若干違ったりしますが、基本はおなじです。
- オイルと燃料を補給する
- チェーンブレーキをかける
- スイッチを始動位置に切り替える(あれば)
- デコンプで圧抜きする(あれば)
- プライマリーポンプで燃料供給
- チョークを引く
- スターターグリップを引いて初爆させる
- 初爆したらスロットルトリガーを引く(チョーク解除 & ハーフスロットル解除)
- スターターグリップを引いてエンジン始動
繰り返していればすぐ慣れます。
エンジンがかからない場合のトラブルシューティングは、後々覚えていけばOKです。僕もそんな感じでした。
追記:エンジンのかけ方動画も撮ってみました
こっちのほうが雰囲気が伝わりやすと思います。
おしまい!