「木が安い」
「昔はもっと高かった」
林業に関わっているとよく聞くフレーズです。
僕は昔のことは知らないので、今の木材価格をベースに考えるしかありません。
けれど実際、山から切って運び出す時間や労力を考えたら
安っ!
と思います。
じゃあどれくらい安くなったのか、調べてみました。
出典と丸太の規格
データの出典は林野庁の「平成28年度 森林・林業白書」より。
比較対象は日本の人工林でたくさん植えられている「スギ」「ヒノキ」。
基本的に、柱や板など建築用材として使われる丸太で、
- スギ中丸太(径14~22cm、長さ3.65~4.0m)
- ヒノキ中丸太(径14~22㎝、長さ3.65~4.0m)
のそれぞれ1㎥当たりの価格です。
ところで「1㎥」がどれくらいか簡単に例を挙げると、
1本の丸太のサイズが
- 小さいほうの断面直径が20cm(500mlペットボトルの長さ)
- 長さ4m
とすると、これ1本で0.16㎥です。
なのでこの丸太が6〜7本あれば1㎥になります。
↓ちょっと多いけどこれくらい。けっこうな量です。
結論:めっちゃ安くなってる
価格のピークは1980(昭和55)年です。その当時は1㎥が
- ヒノキ中丸太:76,400円
- スギ中丸太:39,600円
そして2016(平成28)年の価格は
- ヒノキ中丸太:17,600円(1980年の1/4)
- スギ中丸太:12,300円(1980年の1/3)
ヒノキに関しては1/4の価格まで下がっています。
ただ過去と現在では物価が違うので、単純に1/4とは解釈できません。
別の資料『小さい林業で稼ぐコツ』という本の木材価格推移を見ると、1980年は木材(国産材)の価格がピークとあります。
この本では「当時の大卒公務員初任給を日割り計算して、1㎥で何日雇えるか」の数字も出しています。
比較すると
- 1980年:15日
- 2010年:2日
これだと1/7まで価格(というか価値)が下がっています。
丸太を2㎥出荷すれば、昔は1ヶ月まるまる人が雇えます。
林業は儲かってる時代があった、というのは確かだと思います。
信じがたい価格…。
価格は1990年からずーと右肩下がり
白書からグラフを引用します。グラフを見れば一目瞭然。
1980年ピークから下がって、1990年までにまた回復しています。
1990(平成2)年の価格が1㎥あたり
- ヒノキ中丸太:67,800円(2016年の4倍)
- スギ中丸太:26,600円(2016年の2倍)
そこからはずーと右肩下がり。ちょうどバブル崩壊(1991年)から。
で、現在は横ばいという感じです。
まとめ:必ず買い取ってくれるけど、木の価値は安い
価格を見れば、木はめちゃくちゃ安くなっています。
じゃあ木には価値がないのかというとそうでもなく、木は出荷すれば必ず買い取ってくれます。
- 良い部分は柱や板材として。
- まあまあの部分は合板や集成材として。
- 使えない部分はバイオマス燃料として。
売り先があらかじめ確保されている、出せばお金になる、というのは利点です。
ただ、そもそもが安いので
- 徹底的にローコストで出荷する。
- 自分で加工(製材)して売る。
- 木材としての価値以外を商品化して売る。
- 補助金に頼る。
僕の考えが及ぶのはこれくらい。
いずれにせよ、林業は難しいです。
おしまい。