そんな場合はフンボルトノッチが有効です。
伐倒の時の受け口の「斜め切り」。
これを下から切り上げて、下向きの受け口をつくる方法、それがフンボルトノッチです。
この記事ではその効果や方法について書きます。
「斜めに切り上げる」と採れる部分が少しだけ増える
受け口の斜め切りを下からつくると、下記の図のような形になります。
口が上でなく下向きに開いています。
受け口の機能としては上向きにつくった場合と変わりません。
この切り方の良いところは、受け口で切り捨てる部分が減ること。
下向きの受け口だと、いつもは切り株として残る側の一部をつかってつくられます。
なので1番玉として採れる材積が少しだけ増えます。
↓下向きにつくった場合の1番玉の元口
↓いつもどおり上向きにつくった場合
根元付近は曲がっている場合が多いので、建築材料の丸太として出荷したい場合は切り捨ても支障ありません。
けれどチップ材やパルプ(紙の原料)として売るなら重量が基準になるので、切り捨てる部分が減ればそれだけお金にもなります。
大径木や雑木になると、受け口の破片も数を集めれば馬鹿にならないかもしれません。
「斜面での下方伐倒限定」の切り方
山の斜面に生えている木の根元は、谷側(低い側)のほうがたくさん露出しています。
つまり、山側の根元とくらべて受け口をより下からつくれます。
そして追い口を地面ギリギリで狙えば、1番玉の採れる材積は最大になります。
そもそも下向きの受け口は、追い口よりも下に斜め切りのスペースがなければできません。
なのでスペースを確保するために追い口の位置を上げてしまうと、採れる材積も減ってしまいます。
(平地の場合、上向きの受け口を地面すれすれにつくって、追い口を会合線と同じレベルで切ったほうが材積が出るはず)
つまり、斜面での下方伐倒にだけ効果を発揮する切り方といえます。
欠点:正確な伐倒がむずかしい
下から切り上げるのをやってみるとわかりますが、上から斜めに切るのとまったく違います。
- 下から切り上げるのは重力に逆らう方向なので、チェーンソーを切りたい角度で保持するのがむずかしい。
- 上から見ても切っているラインが見えないので、水平切りと切り結ぶのがむずかしい。
- 会合線の向きを修正したいときの切り足しの感覚がむずかしい。
なので会合線(=伐倒方向)を狙い通りにつくるのがめちゃくちゃむずかしいと思います。
伐倒方向の精度が求められるような木では、僕の技術だとこの方法では切れません。
(うまく切れるいい方法があれば、ぜひ教えてください…)
まとめ:メリットはほかにもある
以上の点をまとめると、
- 材積をより多く稼ぎたい
- 下方伐倒である
- 伐倒方向はシビアでない
という条件がそろうときに下向きの受け口は有効ではないか、という個人的な結論です。
ちなみに、林業ブログで有名な出来杉計画さんの記事に、フンボルトノッチの解説がありました。
そこでは下記2つのメリットも紹介されていました。
- 大径木の場合、受け口の破片の除去が大き過ぎて困難なため、フンボルトにすると受け口から落ちやすい。
- 木が倒れる過程で地面に落ちるため、勢いを一度殺す事になり幹の破損を防ぎやすくなる。
破片の除去が大変とか、どんだけ大きな木を切ってるんだ…。
「地面に落ちて勢いを殺す」というのはかなりメリットになるのではとも思いました。
・・・
※『伐木造材のチェーンソーワーク』p80でも少し解説されていますので、興味のある方はぜひ読んだほうがいいです。
おしまい!