林業の現場ではワイヤーロープをよく使います。
頻繁に使うのが、荷掛け用のたまこと呼ばれる短いワイヤーロープ。
たまこをつくるためのアイ加工についての記事です。
たまこには「アイ」が必要
ワイヤーロープをたまことして使用するためには、両側を輪っか(=アイ)にする必要があります。
アイ加工されたものがホームセンターなんかで売ってますが、自分で編むこともできます。
自分で編むことができれば、自由な長さに調整できたり、切れたときに対応できたり、ワイヤーロープにかけるお金が少なくできたりします。
出来るにこしたことはありません。
ちなみにワイヤーを編んだり繋いだりすることを「ワイヤースプライス」、アイを編むことを「アイスプライス」と呼びます。
アイスプライスの編み方の種類
アイスプライスにはいくつかの編み方と特徴があります。
僕が調べたかぎりでは下記の3つ。
①巻き差し
編み方の性質上、回転すると解ける可能性あり。なのでワイヤーロープ1本で吊る作業には不適。
難易度:普通
②かご差し(割差し、サツマ差し)
3つの中で一番丈夫。
難易度:高い
③変形割差し(角差し、エビ差し)
簡単、かつ差したストランドも抜けにくい。
難易度:低い
僕が習ったことがあるのは「巻き差し」「変形割差し」の2つ。けれどいまのとこ変形割差ししかできません。
※追記:かご差し(割差し、サツマ差し)を習いました!
エビ差し(変形割差し)をつくってみる
おそらく一番簡単(かつ僕が唯一作成可能)な「エビ差し」をつくってみます。
(※「変形割差し」より「エビ差し」の呼称を耳にするので、以下「エビ差し」で統一します)
必要な道具は
・加工するワイヤーロープ
ワイヤーロープはネットで普通に売られています。価格もそんなに高くない。
・ワイヤーカッター
片手持ちのワイヤーカッターでは6mmくらいまでしか切れません。
↓6mmまで切断能力のあるワイヤーカッター。
8mm以上を切るにはデカめのワイヤカッターがあると便利です。
↓12mmまで切断能力のある、両手持ちのワイヤーカッター。
・スパイキ(溝ありシノ)
番線を張るシノに溝がついた道具。
普通のシノでも編めなくはないですが、溝にストランドを刺すことでワイヤーが簡単に編めます。
①ワイヤーカッターで必要な長さにカット
長さは合計340cmにしています。
- アイをつくる部分:片側70cm
- アイを除いた部分:200cm
②ストランドを分ける
ワイヤーロープは6本の「ストランド」と1本の「心綱」から成っています。
端から70cmのところまで、ストランドを3・3に分けます(片方は心綱ありになる)。
③フレミッシュアイをつくる
アイをつくるために、2つに分けたストランドを編んで1本にしていきます。
この輪っかは「フレミッシュアイ」と呼ばれます。
二股の根元から20cm〜25cmのところで2本をクロスさせ、1本になるよう1箇所編みます。(上手くはまっている場合は心綱が隠れます)
そこから根元に向かって、2本とも根元まで編んでいきます。
④ストランドを分ける
片側のストランド3つを1本単位に分けます。心綱がある側は、心綱を二股の根元で切ります。
⑤スパイキを差しながら編んでいく
根元をよく見て、二股に別れる始まりのストランド2本を探し、2本の下にスパイキを差します。
3つに分解したストランドについて、先端からもっとも遠いもの(写真③)の先端を、スパイキ先端側から2本のストランドの下へ差し込みます。
ある程度差し込んだらスパイキを抜いて、ストランド③を最後まで引っ張ります。
次からは同じ。
先ほど差し込んだ「ストランド③」の前後に見えるストランド2本の下にスパイキを通し、「ストランド②」を同じように差し込みます。
最後の「ストランド①」も同じ。
片側の3本が終わったら、裏返してもう片方の3本を同じ要領で差し込んでいきます。
片側1回どおり編めたら、もう何回か交互に編んでいきます。
⑥整形してストランドをカットする
編み終わったら、隙間がないように
・ストランドを引っ張りなおす。
・ハンマーでアイとは逆側へかるく叩いて整形。
など行います。
飛び出ているストランドをワイヤーカッターで切ります。
これで完成。何回かつくれば慣れます。
アイスプライスの注意点、「半差し」が必要
ちなみに上記では片側2回しか編んでいませんが、調べてみると玉掛け用途で使う場合、法規により加工方法が定められていました。
「クレーン等安全規則 第八章 玉掛け」第219条より引用します。
この場合において、アイスプライスは、ワイヤロープのすべてのストランドを三回以上編み込んだ後、それぞれのストランドの素線の半数の素線を切り、残された素線をさらに二回以上(すべてのストランドを四回以上編み込んだ場合には一回以上)編み込むものとする。
なので必ず3回以上編み込んだあと、「半差し」を1〜2回しないといけません。
(半差しはストランドをさらに分解して「内層線」「外層線」に分け、外層線だけをさらに編み込んでいく加工方法です。)
参考サイト>>「半差ししていないものを玉掛けで使用した場合の安全性について」の回答-ロープファクトリー
※2018年1月追記
エビ差し(編み込み4回後、半差し1回)をやってみました。
形がちょっと不細工になりましたが、めちゃくちゃ頑丈そうです。
半差しの利点は、編み込みの終わりが先細り(テーパー状)になることで、そこにかかる負荷を軽減でき耐久性が上がる、とのことです。
アイスプライスの参考サイト
たまこは重量物を引っ張るので、編み込んだアイが解けたら危険。
なのでまず詳しい人や教材を手本にしながら、自分なりに知識を補完していくのが良いかと思います(手順や回数など微妙に違うので)。
ネットで検索すればアイスプライスの資料はたくさんでてきます。
下記のサイトはかなり詳しいので、参考にしてみてください。
・・・
おしまい!